EDITOR BLOG

最後からの二番目の真実

オリンパスとインデックス「第三者委員会」の罪

オリンパス事件で損失隠しを手引きした横尾宣政被告らが6月11日に組織犯罪処罰法違反の容疑で東京地検特捜部に再逮捕され、その翌日には循環取引による売上高の水増し計上の疑いで、証券取引等監視委員会がインデックスに強制調査に踏み切った。この2社に共通するのは、不正の発覚に当たって第三者委員会を立ち上げたことだ。

第三者委員会には弁護士や公認会計士などが担ぎ出されるし、日本弁護士連合会も弁護士向けにわざわざガイドラインを設けているくらいだから世間の信頼は大きい。しかし起用された弁護士たちの意思とは関係なく、ロクでもない目的に使われることがあるようだ。

オリンパス事件では最高裁判事や東京高検検事長を歴任した弁護士が第三者委員会に担ぎ出されたが、関係者によるとこうした起用には理由があり「第三者委員会の調査中に警察や地検が容疑者の身柄をさらわないよう、遠慮させるため」だという。弁護士を交えた第三者委員会を立ち上げた企業に対して、捜査当局はある程度、時間的猶予を与えるのが暗黙の了解になっているようだ。

オリンパス事件では元会長の菊川剛被告らに対して7月3日に判決が下されるが、一方で横尾被告らは容疑を否認しており、公判さえ始まっていない。事件が大騒ぎになっていた一昨年の秋に第三者委員会が立ち上げられ、一カ月もかけて調査を行っていたから、横尾被告らにとっては証拠を隠滅する余裕を十分に与えてしまったのではないか。

しかも元副社長の森久志被告や元監査役の山田秀雄被告は第三者委員会の事情聴取に素直に応じたため、3~4日で調査が済んでしまったが、菊川被告だけはなかなか聴取に応じようとしなかったため、森被告らとはその後は毎日雑談を交わして事情聴取の体裁だけは整え、警察や地検に身柄をさらわれないようにブロックすることになってしまったという。

その結果、3月末の人事異動を控えて捜査当局は十分な時間を確保できず、予め調査の範囲を狭めていた第三者委員会の報告書から、さらに踏み出すことはなかった。そればかりか容疑を否認する横尾容疑者らの反論を突き崩せず、公判前整理手続き中の今も捜査当局は細々と情報を集めている。

第三者委員会の調査中に容疑者を逮捕できないわけではないが、何とも歯がゆい話だ。

一方、インデックスは監査法人から繰延税金資産などの不正計上を指摘され、5月に第三者委員会を立ち上げたが、その調査報告がまとまるのを待たずに監視委員会の強制調査が入った。監視委員会は当然、東京地検への刑事告発を視野に入れているに違いないが、ぐずぐずしていられないはずだ。

FACTA7月号では落合会長の資産管理会社傘下の経営コンサルタントについて触れ、その融資先や取引先には事業の実態がないペーパーカンパニーや休眠会社も少なくないことも指摘したが、もちろんこれらは実地で確認済みだ。報道機関や捜査機関の追及をかわそうとしているのか、インデックスや落合正美会長の周辺では、彼らがどのような人物や会社と関わってきたのかを裏付ける不都合な痕跡を消そうとする動きがすでに始まっている。

(この記事は本日ロイターに配信したものです)

本誌公開質問状に対するカーチスの回答

6月18日にファクスで届いたカーチス経営管理本部経営企画部の回答は以下のとおりである。



6月12日付FAXお問合せへのご回答

平成25年6月18日
株式会社カーチスホールディングス
経営企画本部経営企画部

平成25年6月12日付にて記者よりお問合せのございました質問につき、下記の通りご回答申し上げます。

―記―



貴社がご指摘されているような「野村不動産が仲介しようとしましたが、冨田社長がこれを断ってわざわざN氏に任せた」という事実はございません。

そもそも当社は物件の売主でも買主でもなく、仲介を依頼する立場にはありません。従って、コミッションの扱いについてもそれを差配する立場にございません。

当社といたしましては、適切な社内手続きを経て不動産の処理を進めたものと認識しております。何卒ご理解賜りますようお願い申し上げます。

以上



炯眼な読者はすでに見抜かれたことと思う。この回答は、本誌質問状の②(冨田社長とN氏の関係)について触れていない。これは意図的でしょうね。そこで言質をとられたくないのでしょう。

改めて聞きます。冨田社長はN氏と知己なのか否か。おふたりともSFCGおよびその関連会社出身ですから、知人だったはずである。では、どういう関係にあり、N氏がこの物件の売却に関与した事実を冨田社長が知っていたかどうか。そう突っ込まれるのが嫌で、質問をまたいだと思われます。

カーチスの株主に対してもこれは回答義務があると思う。「物件の売主でも買主でもなく」とあるが、代物弁済の物件である以上、大島氏関連の資産会社に対する貸付金の回収率に関わるのだから、カーチスがこの件のステークホルダーであることは否定できないはずである。

この物件(土地・建物28件)の一覧表でも出しましょうか。それぞれからいくら回収できたのか、回収率は100%ではないでしょう。その損失を圧縮するために、カーチス経営陣は何もしなかったのでしょうか。こんな回答では国税も通らないでしょう。

因縁のカーチス(中古車販売)に公開質問状

大島健伸のSFCGが、リーマンショックのあおりで破綻してから、カーチスは弊誌のウオッチ対象である。

現在の冨田圭潤社長は知らないかもしれないが、実はジャックス以来、その変遷を追跡してきた。ライブドアオート、ソリッド・アコースティック・グループ、SFCG、日本振興銀行とあきれるほど、カーチスは転戦してきた。

いまはKABホールディングス合同会社の傘下に入っているが、歴代社長が逮捕されるという不祥事続きの呪われた企業なのだ。が、日本振興銀行が破綻したあと現経営陣が生き延びたのは七不思議である。

と、いうわけで質問状を送った。6月12日に証券取引等監視委員会が、同じ振興銀傘下にいたインデックスの強制調査に踏み切ったからだ。当然、当局は振興銀傘下企業の実態も知ろうとしている。

で、カーチスについての疑惑を質問状にしたわけである。質問したのが下版間近だったので、弊誌最新号(7月号)ではまだ取り上げていない。でも、重大問題だと思うので改めて問いたい。





株式会社カーチスホールディングス
代表執行役社長冨田圭潤

大島健伸氏資産管理会社からの代物弁済について

ファクタ出版株式会社
月刊FACTA発行人阿部重夫



拝啓
梅雨の候、ご清祥のこととお慶び申し上げます。弊誌は09年にスクープした日本振興銀行事件以来、同行の中小企業振興ネットワーク傘下にあった企業の追跡取材を続けておりますが、本日(6月12日)、証券取引等監視委員会が傘下にあったゲームソフト制作会社インデックスに対し、循環取引による粉飾決算の疑いで強制調査に入りました。

ご承知の通り、カーチスもSFCG破綻で振興銀行傘下に入った企業です。その後の経過についても御社をフォローさせていただいております。大島氏資産会社への貸付金回収について、冨田社長はSOA元社長のN氏を指名し、大島氏側が代物弁済で提出した不動産案件を処分する度に、返済金以外にN氏がコミッションを得ていたとの情報があり、以下の件をお尋ねします。

1) 不動産売却で優先担保を持つ関西アーバン銀行などの了承を得るため、野村不動産が仲介しようとしましたが、冨田社長がこれを断ってわざわざN氏に任せたのはなぜでしょうか。

2) N氏はカーチスの代理人として関与したのか、冨田社長個人の代理人として関与したのか、いずれでしょうか。

3) このコミッションについて冨田社長は承知していましたか。

4) このコミッションは全額N氏の所得になったのでしょうか。

5) このコミッションの税務処理がどうされたかご存知でしょうか。

本件について、弊誌は東京地裁民事13部で平成22年3月26日に行われた和解文書と不動産目録を入手し、このコミッションは本来、カーチスへの返済金に含まれて損金の圧縮に充当すべきではなかったかと考えております。今後の振興銀行傘下企業への国税、警察なども含めた捜査の進展によっては重大な問題をはらんでいると思いますので、冨田社長にご見解をうかがいたく、お忙しいところ恐縮ですが、6月18日(火)までに面会、メール、ファクス、文書、電話いずれでも結構ですが、ご回答いただきますよう、お願い申し上げます。敬具

6月12日



これに対し6月18日、カーチスから回答書が届いた。それは次に紹介しましょう。

FACTAインタビューの誤記をお詫びします

最新号(13年7月号)70ページ掲載のFACTAインタビュー及び、目次でインタビューのお名前を誤記しました。「名和和男氏」とあるのは「名和利男氏」の誤りですので訂正いたします。

このオンラインでは修正しましたが、雑誌は間に合わず、読者のみなさまに配布されてしまいました。

ご本人および読者のみなさまにご迷惑をおかけし、心よりお詫びいたします。

FACTA編集部


インデックス強制調査(振興銀行「残党」の地下茎を追う2)

編集のピークでブログを書いている暇はないのだが、6月12日、ジャスダック上場のゲームソフト制作会社インデックスに対し、「循環取引」による粉飾決算(金融商品取引法違反)の疑いで、証券取引等監視委員会が本社や創業者である落合正美会長の自宅などに強制調査を行った。

本誌はすでに最新号(13年6月号)で「『落合インデックス』が決算修正で瀬戸際」を報じており、いわば予告記事でスクープしたことになる。フリーで閲覧できるようにしたのでご覧ください。

また、それを踏まえてロイター配信とこのブログで、5月27日に「振興銀行『残党』の地下茎を追う」でも、企業名を伏せてその内実を続報している(通信社配信のため、固有名詞のリスクを相手先に取らせることができなかった)が、ここで改めて社名を入れて再録します。





振興銀行「残党」の地下茎を追う2

もう3年経った。FACTA調査報道の標的となり、2010年には木村剛前会長が逮捕されて経営破綻した日本振興銀行の周辺が、今ごろになってにわかに慌ただしくなってきた。警視庁が5月15日に同行傘下だった経営コンサルタント「日本イノベーション」の元社長ら3人が資産隠し(詐欺破産)の容疑で逮捕したのがそのひとつだ。

ちょうど同じころ、同行との間で融資や出資によって捻出した資金を循環させてきた上場企業群のひとつ、インデックス(ジャスダック上場)に対して「架空増資の疑いで捜査が始まる」「課徴金が科されるだけで済むらしい」などといった様々な観測が株式市場で次々と浮かんでは消えた。火のない所に煙は立たぬ。やはり水面下で何らかの動きがあると見るべきだろう。

日本振興銀行とその融資先だった上場企業群(「中小企業振興ネットワーク」と称した)を巡っては、資金の使途や流れがはっきりしない企業買収や第三者割当増資、融資が繰り返されてきた。逮捕者も出たが、その容疑は銀行法違反(検査忌避)だけで、「大山鳴動、ネズミ一匹」となっている。木村前会長を逮捕した警視庁捜査2課も当時の関係者も、「数千億円の預金がどこかに雲散霧消したのに、検査忌避だけじゃ……」ともの足りなそうな顔をしている。

そうしたなかで、奇妙な会社の存在が浮かび上がってきた。前述した上場企業インデックスのオーナー、落合正美会長が代表を務める資産管理会社、落合アソシエイツの傘下で、経営コンサルティング業を営む子会社、AAアドバイザーズがそれだ。この会社の名はネットで検索してもHPさえ見つからず、件の上場企業の公表資料にもほとんど名前が出て来ない。

このコンサル会社の商業登記を調べたところ、中核事業は病院経営のコンサルティング業務と貸金業。経営の悪化した病院に入り込んでカネを貸し付けるのだろうが、4人いる取締役のうち一人を除くと、ITや金融、不動産関係者ばかりで、とても病院経営のノウハウを持っているとは思えない顔ぶれだ。

これまでタッチしたことのない病院経営支援や貸金業に手を出したところで、ノウハウもあるまいに、何をやろうというのだろう。近頃、病院を舞台とした金融詐欺も起きているだけに、怪しさは増すばかりだ。

しかも取締役の面々について素性を調べてみると、そのうちの一人は別の金融コンサルティング会社の代表を務めており、HPに記載されているその実績たるや、目を見張るものがある。株価が100円にも満たないボロ会社や、継続前提に疑義の注記がついた投資会社、債務超過の物流会社、過去に複数の経済事件に関わった投資会社など、息絶え絶えの企業や脛に傷を持つ企業のエクイティ・ファイナンス支援に特化しているのだ。

そしてもう一人の取締役は、こうした事件ではおなじみの大手証券OBであることも判明した。

これらの人物や企業は日本振興銀行の事件とは直接的な関わりはないのかもしれないが、プレイヤーが重複していることから考えて、彼らは地下茎でつながっていて、このコンサル会社こそが結節点と見るのが自然だろう。これまで日本振興銀行の周辺には浮上していなかった人物や企業が、こんなところでつながっているとは驚きだ。

この上場企業(インデックス)と資産管理会社(落合アソシエイツ)、コンサル会社(AAアドバイザーズ)の三者間で、出資と融資、債務保証などで資金を循環させる一方で、銀行からの借入金を焦げ付かせており、捜査当局はどこかで資産隠しを行っているのではないかと動静をうかがっている。