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オリンパスの鑑、百武鉄雄秘書室長を褒め讃える
ことし1年、オリンパスとは水面下でさんざん攻防戦をしましたが、最後にサラリーマンの鑑というべき忠犬に讃歌を捧げたい。百武鉄雄氏、オリンパスのグループ経営統括室経営企画本部秘書室長のことです。
本誌は11月25日付で彼が署名し、オリンパスの社印まで捺してある文書を入手しました。そこに元社長兼会長の菊川剛氏への涙ぐましいまでの忠勤ぶりが現れています。まさに菊川氏を「最高領導者として高く仰ぎ奉じる」日本のポチの模範です。
百武氏署名のこの文書、「定期建物賃貸契約書」とあって、今は東京地検特捜部の聴取を受ける身の菊川氏の隠れ家を会社が提供しているとの内容です。
賃借人オリンパス株式会社
入居者菊川剛
物件名オークウッドアパートメンツ白金
物件住所〒108-0072東京都港区白金2-7-6
部屋番号1401号室2ベッドルーム65平方メートル
入居日11年11月28日
退去日11年12月28日
月額賃料500,000円
となっています。この文書が本物であるならば、過去20年間、隠しに隠して膨らんだ損失穴埋めのために株主資本を毀損して1340億円をねん出した張本人、しかも株価も会社の評判も地に落とした経営トップが、夜討ち朝駆けの取材攻勢から逃げ隠れするために、オリンパスがその隠れ家の家賃を負担して事実上、匿っているということではありませんか。

オークウッドアパートメンツ白金といえば、目黒通りに面していて、シェラトン都ホテルの斜め前、都内でも閑静な高級住宅街です。御年71歳の菊川氏が、小菅拘置所に放りこまれるまで、せめてお寛ぎくださいと用意したのでしょうか。
しかも、オリンパスは菊川氏のためにインターネットとペット代を支払っています。ネットは賃料に含まれていますし、これからの長い長い裁判闘争には必需品ですから、やむをえないということでしょうか。しかしペット代とは驚きです。ペット保証金に20万円、ペット清掃代に8万円も払っているのです。菊川氏は、悶々の日々を慰める犬か猫を抱いて、この隠れ家にお住まいということなのでしょうか。
ご家族については、協議離婚で生前相続、なんて噂も社内では流れていますが、真偽は別として、孤独な元社長兼会長を慮って百武秘書室長のかゆいところに手の届くような心くばりは素晴らしい。
この文書、再契約のハンコが捺されていますから、11月28日以前にもオークウッド系列の賃貸マンションを借りていたのでしょうか。もしかすると、12月28日の退去日以降もまた再契約しているかもしれません。それとも年末はこっそり自宅に舞い戻っているのでしょうか。
しかし、今期の決算でこの隠れ家代とペット代、あわせて月78万円をオリンパスはいったいどの項目に計上するのでしょうか。またまた「のれん代」?「会議代」「福利厚生」「交際費」……新日本監査法人や東京国税局が認めてくれるとは思えませんが。
これがオリンパスの本質でしょう。なんの反省もしていないことは明らかです。傷心の菊川氏を癒すのがペットだとしたら、秘書室長をペットにして飼えばいいでしょう。
百武氏、秘書室長に抜擢される前は、人事部人事グループリーダーとしてご活躍でした。とりわけ彼を有名にしたのは、東京高裁でオリンパスが敗訴した例の内部通報者左遷事件です。
オリンパスの顧問だった森・濱田松本法律事務所の女性弁護士と百武氏は、なんでもこの内部通報者を産業医に診断させようと強要したなどとネットでも批判されています。でも、裏側からみれば、会社のため、というより上司のために粉骨細心、ひたすら尻尾を振って出世を遂げるオリンパス社員のお手本ではないでしょうか。
彼だけではありません。ポチ諸君は、この百武氏に見習おう。ピョンヤンの泣き女、泣き男のように、ウソ涙を流して大仰に菊川「将軍様」の凋落を嘆き、最後の最後まで忠誠を。
来年もよいお年を。
オリンパス家宅捜索の感想
まあ、予想どおりの展開といったところでしょうか。しかし結論が先にありき、でないことを検察、証券監視委、そして警視庁には祈ります。
横尾宣政氏について一言。野村企業情報にいた時代から、「おれがおれが」で上司の言うこともまるで聞かず、確か1年で元に戻された過去もあるようです。その時代の話をもしかしたら聞けるかと思い、風月堂前6Fに行こうとしたのですが、タッチの差で逃げられてしまいました。ロマネコンティのコレクションは国税に押収されることになるのでしょうかね。
SBIホールディングスに対する公開質問状
最新号では、証券界の異端児と言われ、野村証券出身で退社後はソフトバンクの孫正義社長と組んでCFO(最高経営責任者)となり、その後、独立してSBIグループの総帥になった北尾吉孝氏のファンド運営がどのようになされているかを深く追跡した記事を載せます。
この8月に運用を終えたファンドの一つ、匿名組合の運用実績がどうのようなものであったかを、公開企業および未公開企業の投資先全社の固有名詞と、その簿価、売却金額、損益を1円単位まで丸裸にしたリストを掲載するとともに、SBIホールディングスに対して送った質問状とその回答をここに公開します。
オリンパスのケースでは、これまで調査報道にとって厚い壁だったSPC(特別目的会社)のベールを剥ぐことができたのですが、今度はもう一つの壁である匿名組合のベールを剥ぐことができました。それは我々が内心密かに誇っている成果です。
40年近く前の「田中金脈」追及報道で文藝春秋が土地や法人の登記簿謄本からさかのぼる手法を開拓し、私も90年代のバブル崩壊期までその手法に準拠していましたが、不良債権処理の過程でSPC、匿名組合、LLP(有限責任事業組合)などが認められるようになり、さらに海外も使われて、飛ばしの多くが見えなくなりました。
今回、FACTAがチャレンジしているのは、今まで難攻不落だったこのビークルを突破することで、創刊以来、悪戦苦闘の末にこじあけることに成功し始めました。その手口が解明されることは、証券取引等監視委員会や金融庁、検察庁にも新たなフロンティアを開拓することになるでしょう。
下記は、明けた突破口からFACTAがいかに追及していくかの一端です。
SBIホールディングス
広報担当者御中
KLabおよびエフオーアイに関するお問い合わせ
ファクタ出版株式会社
発行人兼編集主幹阿部重夫
拝啓
師走の候、時下ますますご清祥の段、お慶び申し上げます。平素は格別のご高配を賜り、厚くお礼申し上げます。弊誌は調査報道を中心とする月刊総合誌で、最近のオリンパス報道でも内外で高く評価されました。次号(12月20日号)では、今年9月27日に東証マザーズに上場しましたKLabと、10年6月15日に東証マザーズ上場廃止になりましたエフオーアイについて取材した記事を掲載する予定です。この件についていくつかの確認と、御社のご見解をうかがいたく、書面で恐縮ですが、質問状を差し上げた次第です。
質問は以下の6点です。
1.SBIグループのSBIブロードバンドキャピタル株式会社(代表者、中川隆氏)が運営する「SBIブロードバンドキャピタル投資事業匿名組合」(1号~4号)は、上場前に3回にわたりKLabの未公開株を取得したのは事実でしょうか。
2.その平均取得株価はいくらだったのでしょうか。
3.上記の匿名組合が、上場に4カ月強先立つ5月13日、SBIホールディングスCEOが代表の「SBI-R&D投資有限事業組合」「無限責任組合SBIインベストメント」にこのKLab株を売却したのはなぜなのでしょうか。
4.SBIグループのSBI証券は、KLab株上場の副主幹事証券でしたか。事実だとすれば5月時点で初値(3970円)の見当はついているはずで、5月時点での売却は匿名組合投資家の「得べかりし利益」を自社系に移す利害相反行為の恐れがあったと考えられないでしょうか。
5.この匿名組合は、粉飾で上場廃止になった「エフオーアイ」にも投資し、損失を計上していますが、エフオーアイ代表取締役が元SBI社員だったのは事実でしょうか。
6.SBIはエフオーアイに損害賠償請求はしていますか。
質問は以上です。ご多忙中のところ大変恐縮ですが、次号の締切もございますので、12月9日(金)までにご回答いただければ幸いです。ご回答は直接取材、書面、ファクス、メールなどいかなる形でも結構です。よろしくお願い申し上げます。敬具
12月5日
これに対するSBIホールディングスの回答は、オリンパスなどと違い、たいへん懇切丁寧なもので、担当者のご尽力に感謝します。しかしながら、この回答をもって「なるほど」と弊誌も納得したわけではありません。その理由は、最新号の「北尾SBI『金の卵』簒奪商法」をお読みください。
本誌にはまだ追撃する弾があって、この一見もっともらしい釈明に対し、さらなる批判を加えていますので、詳しくは記事をご覧ください。
ファクタ出版株式会社
発行人兼編集主幹阿部重夫様
頂戴いたしましたご質問につき、以下のとおり回答申し上げます。
質問1に対する回答
SBIブロードバンドキャピタル投資事業匿名組合(以下「本匿名組合」といいます。)は、2006年12月26日から2009年2月27日までに、㈱USENやKLab社元役員4名等から、3回にわたりKLab株式を取得しています。
質問2に対する回答
2011年4月の株式分割考慮後の平均簿価は、約1,125円です。
質問3に対する回答
まず、本匿名組合によるKLab株式の売却先は、「SBI-R&D投資事業有限責任組合」であり、SBI-R&D投資事業有限責任組合の無限責任組合員が「SBIインベストメント株式会社」という位置付けとなります。それぞれに売却したわけではございませんので、その点、予めご確認下さい。
ご質問の点ですが、KLab株式会社については、売却に先立って同社に対し実施したヒアリングの結果、2011年5月の時点で、主幹事証券の上場審査の進捗状況から(本匿名組合の契約期限である)2011年8月末までに上場(IPO)できるスケジュールではないとの説明を受けたという背景がございます。それに加え、当時、主幹事証券からは、株式市場の環境を考慮して本匿名組合の全保有株式のロックアップが求められておりました(なお、ロックアップを受けると、原則として上場日から6ヶ月間売却できません。)。
こうした事情を踏まえ、匿名組合契約に定める本匿名組合の運用期間である2011年8月31日までには、当該株式を株式市場で売却することは不可能であると判断いたしました。
また、本匿名組合においては、その組合契約上、運用期間終了後(9月以降)に清算期間を設けて投資証券を保有し続け、清算手続きの中で投資証券売却のタイミングを図るということは規定されておりません。そのため、投資証券の処分につきましては、本匿名組合契約の定めに従い、契約期間中、すなわち運用期間中である2011年8月31日までに行うべく売却を進めておりました。
以上のような事情により、IPO前の2011年5月13日に、SBIインベストメント株式会社が無限責任組合員を務めるSBI-R&D投資事業有限責任組合に対し、1株当たり1,490円で売却いたしました。
質問4に対する回答
SBIグループのSBI証券は、KLab株式会社の副幹事証券会社であります。
もっとも、ご承知のように公募価格の決定に際しては、主幹事証券会社と発行会社が協議して決定することとなっており、副幹事証券会社が発行条件の決定に関与することはございません。SBI証券が副主幹事証券会社であることは2011年5月の売却とは全く関係ございませんので、その点、誤解なきようお願い申し上げます。
本匿名組合として、2011年5月の時点でKLab株の上場時の初値について、見当が付いていたという事実はございません。
本匿名組合におきまきましては、あくまでIPO手続きが本格化する以前の2011年5月時点に公知となっている情報を元に、本匿名組合の組合員の利益を害することのないよう第三者たる外部の専門家(監査法人・税理士法人等)に株価の算定を依頼し、その算定結果に基づいて1株あたり1,490円の売却価格の決定を致しました。
本件取引は以上のような経緯で実行されており、ご質問にあるような、利害相反取引(利益相反取引)との関係でも公正に行われたものと理解しております。
なお、結果的にではございますが、この売却株価1,490円は上場時の目論見書に記載の「想定発行価格(1,540円)」と比較しても妥当なものと考えております。
質問5に対する回答
エフオーアイの代表取締役専務の上畠氏は、2000年4月28日にSBI(当時はソフトバンクインベストメント㈱)に入社し、2001年6月12日に約1年1ヶ月の在職期間をもって同社を退職しております。その後は、当社グループのファンドの投資先の経営者として接触はございましたが、それ以上の特段の関係はございません。
質問6に対する回答
2010年10月26日付けで、主幹事であるみずほインベスターズ証券とFOIの監査を担当した公認会計士3名を共同被告として、東京地方裁判所に対し、損害賠償請求訴訟を提訴しており、当該裁判は現在も係属中です。被告の選定については、弁護士の意見を踏まえ、勝訴判決の実現可能性(回収可能性)の観点より決定いたしました。なお、FOIの経営陣は、刑事被告人となっており、その個人として財産状態からも賠償能力なしと判断し、被告対象といたしませんでした。
以上
もちろん、SBIグループ傘下のSBI証券はネット証券最大手であり、デイトレーダーの方々にも人気が高いことは承知しております。しかし日経ビジネスの特集では、心なしかやつれた北尾氏の写真が載り、SBIグループで何が起きているのか、今後ともFACTAは追っていくことをお約束します。
目黒のサンマでなく「目黒の8万」 財務事務次官・勝栄二郎氏の家賃
昨日は東証上場の新華ファイナンスへの質問狀とその回答書を公開しましたが、今日は「影の総理」とされる増税総司令官の勝栄二郎・財務事務次官に関するやり取りを公開したいと思います。
この不況下で増税を強行しようとしている野田佳彦総理の背後で黒衣に徹しているのが財務省一家ですが、そのトップが住んでいるのが家賃激安の公務員住宅です。写真を撮りに行ってみましたが、一等地の高台のはなに城塞のように聳えたって、下々を睥睨するような12階建ての立派な集合住宅でした。
あきれるというより、こんなところに住んでいながら、「民間社宅なみ」と強弁する神経には恐れ入ります。だいたい、大企業でもこんな一等地に250戸もの社宅を抱えるところはそうはありません。首都高速の音もこの高台のうえまでは届かず、閑静かつ景色のいい場所でした。
これを役得とみる意識がまったく欠けているお役人に、「官のムダ削減はもう限界だから、あとは増税で税収増を図るしかない」と言う資格があるのでしょうか、というのが素朴な疑問です。
というわけで、FACTAは財務省に以下のような質問状を送りました。
財務省広報室御中
勝栄二郎事務次官の公務員住宅について
ファクタ出版株式会社
発行人兼編集主幹阿部重夫
拝啓
師走の候、時下ますますご清祥のこととお慶び申し上げます。弊誌は調査報道を中心とする月刊情報誌で、最近はオリンパス報道などでお聞き及びかと存じます。さて、財務省は12月1日、国家公務員宿舎を今後5年メドに25・5%削減する(5万6千戸減)計画を発表されました。そこで弊誌は、財務省事務方の最高責任者である勝事務次官が入居されている公務員住宅について取材を進めています。朝霞、方南町問題など公務員住宅は国民の関心事ですので、事実確認も含めて以下の質問にお答えいただければ幸いです。
1. 勝事務次官は東京都目黒区××の公務員住宅に入居していますか。
2. お住まいの広さは何平米、民間でいう4LDKでしょうか。
3. 次官の入居棟は築5~10年と考えてよろしいですか。
4. 民間サイトが国家公務員宿舎法や関連法規などから試算した家賃は、90平米、築10年の4LDKで月85860円ですが、勝次官も月8万円台の家賃を支払っていると考えていいでしょうか。
5. 渋谷に近い周辺相場は、同条件なら30万円をくだらないと思われます。差額分について民間では家賃補助とされますが、勝次官はこの差額について課税されていますか。
6. 勝事務次官の年収はいくらですか。公務員住宅に入居している理由は何でしょうか。
あらまし以上です。個人のプライバシーを盾に回答を保留なされば、歴代政権のもとで不退転の決意で増税路線を進めてきた財務省トップのしめしがつかなくなることを危惧します。ご多忙中まことに恐縮ながら、締切もございますので、12月9日(金)までにご回答いただけますよう、心よりお願い申し上げます。敬具
税制改正大綱の議論のまっただ中だったので、香川俊介官房長はカッとしたらしい。財務省の知り合いからたちまちメールが飛び込んできて、ぜひご説明をと言われました。上司思いのその熱心さには心を打たれますが、FACTAは個人攻撃を狙いとする雑誌ではありません。これはあくまでも仕事、と公式回答を求めました。さて、財務省がどんな回答を書いてくるかと楽しみにしていましたが、まったく想定の範囲内で、正直がっかりさせられました。12月9日付の回答はこうです。
ファクタ出版株式会社
発行人兼主幹阿部重夫様
公務員住宅にかかる件について
ご質問頂きました件につきましては、特定職員の個人情報であるとともに、政府関係者の安全確保等にかかる危機管理体制上、外部への漏出防止を徹底するとされていることから、お答えすることはできないことについて、ご理解のほど、宜しくお願い申し上げます。
なお、幹部職員に貸与される宿舎は、通常e企画(80㎡以上)となります。宿舎使用料は、国家公務員宿舎法に基づき、標準的な建設費用の償却額、修繕費、地代等に相当する額を基礎とし、かつ、居住の条件その他の事情を考慮して、個々の宿舎毎に、決定しております。
課税の取扱いにつきましては、民間企業の社宅と同様、所得税法等の定めに従って、適正に取扱いがなされております。
災害対策本部の本部長等を務める立場にある事務次官は、政府の迅速な対応が求められる事件・事故等が発生した際、緊急参集する必要があります。緊急参集する必要がある職員等については、国家公務員宿舎への入居が認められています。また、事務次官職の年収は、一般職の職員に関する法律上、2200万円程度となっています。
(参考)「政府関係者等への攻撃等に対する危機管理体制について(申し合わせ)」(平成20年12月4日副大臣会議)(抄)
各府省は、平成20年11月18日に発生した元厚生事務次官等連続殺傷事件を重く受け止め、この種事件による被害の再発防止を期し、政府関係者等への攻撃に対する管理体制を強化する。
4職員の個人情報の漏出防止の徹底
職員六等、府省関係者の氏名・住所等が記載されている資料の取扱いに留意するなど、職員の個人情報への漏出防止を徹底する。
財務省としては、他の問い合わせもあり、この回答(事実上の無回答)でご理解いただきたいという態度です。もちろん、勝次官が暴漢に襲われることなど本誌も望みませんが、これだけ書面では厳重警戒を言っている割に、現地を視察してみると、まるでノーガードでした。
しかしながら、こちらの取材に対し、国家公務員の幹部職員(指定色俸給表適用クラス)4231人のうち、公務員宿舎に入居しているのは2277人。そのなかでe規格に該当するのは1202人。勝次官も当然、その中に含まれているはずですが、財務省はわざわざ内訳を裁判所748人、法務省242人、防衛省65人としてきて、つまり判事と検事と防衛関連が大半だと強調しています。
しかし、残る147人のうち財務省が何人かは明かしていません。
さらに、過去にも家賃などの宿舎使用料の改定が行われており、昭和62年24.5%、平成4年18.5%、平成16年12.3%、平成19年12.3%と逐次上昇してきたことを強調していましたが、デフレ下で上げるというのはもとがあまりに安すぎたからでしょう。目黒のケースのようにそれでも市価の3分の1なのですから。
税金については、民間相場との差額ではなく、固定資産の評価額に一定割合(ケースバイケースで分からないようになっているところがミソ)をかけて基準価格を割り出したうえで、その基準価格との差額が50%以上の場合は税金を払うことにしているそうです。

それは「民間と同じです」と強調していましたが、価格ではありません。民間の社宅と同じという意味です。こういう形式だと、基準価格を芽いっぱい低く見積もる操作が可能になっていると思います。国税庁は身内ですから、次官に気配りするのは当然でしょう。
この公務員住宅の一帯は、江戸時代は鷹狩の猟場だったようで、維新後は陸軍の乗馬学校などがあり、敷地内には明治天皇や大正天皇がそこから乗馬の様子を見たという「天覧台」の石碑が立っています。
そういえば「目黒のサンマ」もここらがいわれでは?笑点のダジャレみたいですが、「目黒のサンマ」ならぬ、「目黒の八万」。だれか、思いっきりカラシのきいた落語にでも仕立ててくれないでしょうか。
オリンパスよりも悪質な新華ファイナンス
ブラックアウト期間中ですが、次号記事に関連して、あちこちに質問状を発していますので、次号の刊行に先だって、その応酬を事前に公開していきます。まずは中国銘柄。
FACTAが不正会計疑惑を指摘した上場企業はオリンパスだけではありません。2004年に東京証券取引所の中国系企業第1号としてマザーズに上場した新華ファイナンス(現新華ホールディングス)は、オリンパスよりも悪質で日本の資本市場を愚弄する存在と言えます。
本誌7月号の記事(「東証赤っ恥『新華』創業者起訴の真相」)で報じたように、創業者で前CEO(最高経営責任者)のフレディ・ブッシュを含む元役員3人が、在任中のインサイダー取引、粉飾決算などの容疑で米国の裁判所に起訴されています。米連邦捜査局(FBI)が3人を捜査し大陪審が起訴を決定したということは、米司法当局が新華の粉飾決算を指摘したのと同義です。
にもかかわらず、新華は「現在の取締役及び取締役会は、本件起訴に関わる取引については、一切存じ上げません」という声明を出したきり知らん顔。オリンパスのように第三者委員会を設けて起訴事実を調査したり、過去の決算を訂正したり、会社として元役員を告発する気はさらさらないようです。オリンパス以上に悪質と言えるゆえんです。
こんな企業がなぜいまだに上場を許されているのか、理解に苦しみます。オリンパスは今日(12月14日)、損失隠しの発覚で遅れていた2011年4-9月期決算を報告し、それを受けて東証(自主規制法人)が上場廃止にすべきかどうかを審査することになっています。しかし新華のようなイカサマ企業を野放しにしている東証に、まともな判断力があるとはとうてい思えません。
本誌は6月に新華に取材を申し込みましたが、当時のCEOのジェイ・リー氏は拒否。その後、リー氏は新華を去り、11月1日付でワン・ビン氏が新CEOに就任しました。今回本誌が改めて取材を申し込んだところ、ワン氏も取材は一切お断りだそうです。
そこで、本誌が新華に送った質問状(原文は英語)と、同社IR部の濱田拓男マネジャーの電子メールによる回答文を公開しましょう。
まず質問状から。
新華ホールディングス
最高経営責任者(CEO)
ワン・ビン博士
5月10日、新華ファイナンスの元CEOであるロレッタ・フレディ・ブッシュ氏と元取締役のシェリー・シングハル氏およびデニス・ペリーノ氏が、米国の大陪審により共謀、郵便詐欺、決算書類の虚偽記載などの容疑でコロンビア特別区連邦地方裁判所に起訴されました。これに対し、貴社は5月12日に「当社は、この度、本件起訴に関する事実を認識し、現在、本件起訴の状況及び事実関係を調査中です」という声明を発表しています。
起訴状によれば、元CEOと2人の元取締役の行為は米国と日本の証券法規に明らかに違反するものです。有罪判決が下った場合、貴社は日本の金融庁および東京証券取引所に提出した過去の決算書類を修正する必要があり、それを怠れば上場廃止となるはずです。
同じく起訴状によれば、元CEOと2人の元取締役は2005~2006年頃、貴社のバランスシートを操作して資金を着服しました。あなた(ワン博士)は2004~2006年にかけて取締役を務めており、少なくとも役員としての善管注意義務があったはずです。加えて、あなたは現CEOとして徹底した調査を行い、貴社が被った損害を賠償させるため元役員らを告発する義務があるはずです。
私どもは6月に前任者のジェイ・リー氏に取材を申し込みましたが、彼は拒否しました。今回あなたが新CEOに就任し、12月16日に投資説明会を開催するため東京を訪れますので、ここに改めて取材を申し込みます。
私どもが知りたいのは、貴社が無罪を証明し上場廃止を回避するため、あなたがどのような計画を立てているかです。また、リー氏退社の具体的な理由もお聞かせください。リー氏とその他の取締役の間にどのような見解の相違が生じたのでしょうか。
以上、よろしくお願いします。
これに対する新華の回答は以下の通りです。
新華ホールディングス濱田です。
お世話になっております。
この度は当社CEOワン・ビンへの取材並びに会社説明会のお申し込みありがとうございました。
ただ残念ではございますが、当社としては今回の取材の申し込みをお断りさせていただき、また会社説明会へのご参加もご遠慮いただきたい意向です。
米国起訴の件につきましては、まだ裁判の途中であることに加え、当社のリーガル・カウンセル(米国)からの助言もあり、現在のところマスコミの皆様からのご質問に対して、いかなるコメントも控えさせていただいている状況です。
会社説明会に関しては、今回開催の目的は、あくまで「個人投資家」向けに当社の現状と今後の見通しをご説明させていただくことにあり、マスコミ向けでは無いということが理由です。
また、前CEOのジェイ・リー氏の退任に関しては、11月1日に公表させていただいております「代表取締役の異動に関するお知らせ」をご覧下さい。
以上、ご意向に沿うことができませんで、誠に申し訳ございませんが、何卒ご理解の程よろしくお願い申し上げます。
参加もご遠慮いただきたいとは、オリンパスとそっくりです。新華の濱田氏の対応は、本誌を会見からも排除したオリンパスの最悪の広報室長、南部昭浩氏と同じ。新華もその轍を踏むのでしょうか。
ところで、ワン氏はこのたび来日し、12月16日に東京で投資家向けの会社説明会を開きます。マスコミの取材を拒否するのは自由ですが、ワン氏には株主に対する説明責任があります。説明会に出席する投資家の方には、ぜひ弊誌に代わって彼に直接質問をぶつけて頂きたいと思います。
またブラックアウト期間です
オリンパスの高山社長が、取締役の総退陣を口にし、12月14日には滑り込み中間決算発表を行う前の佳境ですが、また編集の「籠の鳥」になります。しばらくは何が起きてもコメントできなさそうです。
オリンパス第三者委員会報告
12月6日に東京・大手町のファーストスクエアでオリンパス第三者委員会(甲斐中委員長)の報告が発表されましたが、私は所用があって行けず、山口記者と弊社社員に行ってもらった。
報告は会見後に見たが、ワクワク半分、ドキドキ半分である。ワクワクは新事実があるかどうか、ドキドキはFACTAが今まで報じた部分で違いがあるかどうか。入試結果を見に行くようなものだ。
結論から先に言うと、カネの流れの細部、とりわけ飛ばしスキームと穴埋めスキームの細部は、さすがに内部資料を入手できた委員会だけに、目新しい部分があった。ディテール大好き人間の私にとっては興味をひく部分もあり、細部へのこだわりをかなり満足させてもらえた。
ほっとしたところもある。われわれが苦心惨憺、取材から組み立てた推論の構図と大枠はほぼ同じだったからだ。外部取材者は委員会と違って、足りないピースを組み合わせてジグソーを組み立てなければならない。はるかに労力が要る孤独な作業だった。委員会にとって、なまなかな調査では許されないというプレッシャーを与える存在であったなら良かったと思う。
要約版を通読した段階で、一言だけ言わせてもらおう。
報告書はマネーフローおよびスキームについてはよく書けていると思うが、われわれが直近の12月号で載せたような「不正人脈」の相関が弱い。委員たちも認めているように、オリンパス内部の資料と事情聴取に依存しているため、「外部協力者」の調べが遅れている。そこは強制権限のある捜査当局にお任せなのだろうか。
委員会はオリンパス役員一掃を提言しているが、オリンパスの管理職および関係者は、いまだにFACTAの内部情報源はどこかとしきりに嗅ぎまわっている。いやな体質は変わっていない。そろそろあきらめて、まっとうな会社への道筋を模索すべき時期だ。そうでないのなら、相関図はそのイヌたちにまで及ぶだろう。
手嶋龍一著『ブラック・スワン降臨』
FACTAの連載コラム「手嶋龍一式intelligence」でカバーしてきた世界が、著者手嶋氏の書き下ろし本になりました。タイトルは『ブラック・スワン降臨9・11-3・11インテリジェンス10年戦争』(新潮社税別1500円)です。12月7日発売です。
その後書きを頼まれたので、手嶋氏の応援団としてこのブログに掲載します。なお、この後書きの圧縮版を新潮社の「波」12月号に載せています。また、これとは別に、今週末の熊本日日新聞の書評欄でこの本を取りあげ、まったく別の文章を載せる予定です。
以下に載せる後書きのタイトルは「ロゼッタ・ストーンの沈黙」です。
*****
たった一片のピースから、ジグソーパズルの全絵図面を復元できるか。
不可能?いや、それが手嶋龍一氏の言う「インテリジェンス」――錯綜する情報の分厚いヴェールからコアを透視する行為の本質だと思える。
漫然と集積される「インフォメーション」からそれは抽出できない。そこで必要になるのは、内部情報を暴くスパイまたは告発者の存在か、物事の本質を見抜く勘か、脳細胞に蓄えた過去の記憶か、さんざん苦汁をなめた経験か、なにかこの世のものならぬ霊感か。
いずれでもあっていずれでもない。インテリジェンスの原語はラテン語のintellegentia である。inter(中を)lego(読む)作業、すなわち「内在する物語を読む」ことに尽きる。インテリジェンス・オフィサーとは、優れた物語の紡ぎ手なのだ。手嶋氏を衝き動かしているのも、この内在する物語を語る本能だろう。
本書は巻頭、いきなりアンドリューズ空軍基地内のゴルフ場に読者を連れていく。そこでプレーするバラク・オバマ大統領と、シークレットサービスのイヤホンに飛び込んでくる交信。閑暇を盗んで気晴らしに出向いたかのように見せかけ、ハーフで切り上げたこのプレーが、実はパキスタンで進行中のジェロニモ作戦(ビン・ラディン急襲作戦)の目くらましだったことが明らかになる。
9・11テロ以来、10年目にして米国がようやくこの宿敵の射殺に成功したこと自体は、すでにさんざん報じられた。そのディテールも作戦後に溢れた報道を丹念に読めば、入手不可能なインフォメーションではないだろう。
ほんとうの眼目は、手嶋氏が映画の脚本のように組み立てた「物語」にある。
アフガニスタン侵攻以来、戦略的にも経済的にも莫大な支援を注ぎ込んだパキスタンに対し、事前通告もなく領土内に密かに侵入し、国家主権を踏みにじって「ワールド・トレードセンターの復讐」の実行を命じた大統領の決断の物語が語られているのだ。
手嶋氏の意図は最後に明らかになる。東日本大震災の翌早朝、首相官邸からヘリで飛び立ち、東京電力福島第一原発に降り立って、危機の陣頭に立つパフォーマンスを演じながら、海水注入に手間取って炉心溶融を起こした菅直人総理を対置させているからだ。官邸で怒鳴りまくって実は決断を回避していた無残な物語である。
そう、決断の前に万全の情報などほとんどない。
オバマ大統領もアボタバードの現場に投入したステルス機能を持つ最新のブラックホーク改良型ヘリコプターが墜落する事態に見舞われ、1980年にジミー・カーター大統領がテヘランの米大使館員救出に失敗したイーグル・クロー作戦が頭を一瞬よぎったことだろう。
すべては一回性の出来事で、決断はそこにしかない。
「想定外」といった言い訳はありえない。手嶋氏が言う「インテリジェンス・サイクルの欠如」とは、単に日本の官庁の組織問題ではないのだ。情報の不完全性のなかで、なおジグソーの全絵図面を透視して決断できるための方法論である。
それはひとえに、瞬時に物語を構築する能力があるか否かだろう。菅総理の無残はそうした能力の欠如に由来する。しかし市民運動家上がりで上昇志向だけの貧相な総理を責める「憂国の論理」や「リーダー論」に、手嶋氏は安易にくみしていない。
憂うべきはむしろ、なすすべもなかった首相官邸および霞が関のガバナンス(統治)の根源的かつ日常的な退廃にある。本書でオバマと菅の「決断」を対照させたのは、情報のSchwarzwald(黒い森)に深く分け入って、鬱蒼と茂った昼なお暗い木立にLichtung(間伐地)を切り拓き、「内在する物語」を開示するためだったと思える。
本書は書下ろしであるが、エピソードの多くは、私が創刊した月刊誌FACTAで6年近く前に始めた「手嶋龍一のintelligence」の連載コラムでカバーしている。
しかし編集者としては内心、アクロバットかなと思っていた。雑誌は常に現在進行形である。一回性の現実の連鎖しかない。そこでは否応なく、全知全能の「神の目」のような擬装、つまり知ったかぶりが常に求められる。
手嶋氏のコラムも2ページ見開き、一回読み切りだから、そこで切り取れる情報も断片を免れない。あでもないこうでもない、という逡巡は読者を惑わせるだけだ。
しかも、テーマはインテリジェンス――全知全能の「神の目」のないところを出発点とするのに、知ったかぶりの擬装をしないでコラムが成立するのだろうか。
「インテリジェンス」は古代文字の解読に似ている。ジグゾーパズルのピースそれぞれの形状や色彩を記憶して、ひとつひとつ嵌めていく忍耐の作業。やがて浮かび上がる壮大な絵図面にひそやかに覚える喜び。大英博物館でロゼッタ・ストーンを見るとき、いつもそう思う。
だが、あの暗色の花崗閃緑岩に刻まれた碑文、エジプトの神聖文字(ヒエログリフ)と民衆文字(デモティック)とギリシャ文字の同文が並んでいるという、奇跡のような僥倖がインテリジェンスには期待できない。
手元にあるのは、ギリシャ語でいう απαξ λεγμενον(hapax legomenon =一回限りの言葉)だけ。この一片だけのピースで、あなたはヒエログリフを完璧に解読したシュンポリオンになれるか。
ロゼッタ・ストーン発見のきっかけになったナポレオンのエジプト遠征のように、幸運の女神がインテリジェンス・オフィサーに微笑んでくれるとは限らない。それが単に情報を盗むだけのエスピオナージ(潜入工作)との決定的な違いだろう。
インテリジェンスには深い思索がなければならない。その黒い森にぽっかり浮かぶLichtungには、lumen naturale(自然の光)が木洩れ日のように差す、とマルチン・ハイデッガーは言う。けれども、苔むしたままのロゼッタ・ストーンが、人知れず草陰に埋もれて沈黙していても不思議ではない。
hapax legomenonにはしかし、別の攻略法がある。
シェイクスピアを例にあげよう。全作品88万語のうち、固有名詞を含めて使われた語彙は2万9千語と驚くべき言語の魔術師で、だからこそというべきか、一度しか使われなかった言葉がある。「恋の骨折り損」第5幕第1場のHonorificabilitudinitatibus。小田島雄志訳では窮して原語のまま、ジュゲムの呪文にしている。
しかし、二度出現する単語、三度、四度……と並べていくと、出現頻度がk番目の単語が、全体の単語数のk分の1を占めるという自然言語の確率分布「ゼフの法則」に近づく。
これこそ「天の秘鑰」なのだ。
ビンラディンの隠れ家が突き止められたのは、クーリエ役であるアル・クウェイティ(実名シェイク・アブ・アハメド)の追跡に成功したからだ。全世界の通信の奔流に聴診器をあて、天文学的な頻度の交信から一人の男のキーワードを割り出すには、確率分布の統計数理を使って一回性の壁を破ったに違いない。
数理の手品?いや、そんなことはない。グーグルなどの検索エンジンは誰もが日々体験している。あれはインターネットと同じく、軍事技術の転用なのだ。
手嶋氏の「物語」はそこまで垂鉛をおろしている。
ウッドフォード氏が抗議辞任
連絡がありました。プレスリリースの内容を見ると、これまでの主張の延長線上にあり、この問題から身を引くというものではないようです。
リリースでは、高山修一社長以下、オリンパスの現取締役会は、菊川前会長らが延命のために指名した顔ぶれであって、損失隠しや同社長解任に加担した役員からなり、企業再生を担うレジティマシーがないという理由で、取締役会の総退陣と臨時株主総会の開催を要求しています。
私も先週のパネルディスカッションやブログ、また最新号の「社外取締役」の記事にあるように、高山社長自身にレジティマシーがないと考えています。菊川「一味」の社外取締役に推薦されて、社長に就いているからです。
そのうえに社内では、「ガイジンに会社を乗っ取られるな」など恐怖心をあおることを社員の前で言い触らし、管理職には「会議室には盗聴器が仕掛けられているかもしれない」などと、FACTAが違法取材を行っているかのような流言飛語をまきちらしている現状には、あきれるほかありません。
先週、ウッドフォード氏はいきなりの社長解任は「私のトラウマになった」と言っていましたが、こういう卑劣な保身策に走る取締役たちはさっさと総退陣すべきで、その範を示すために自分が先に辞めるという判断はまっとうだと思います。
リリースの日本語訳は以下の通り。
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平成23年12月1日
各位
オリンパス:再生への道
私は、平成23年10月14日にオリンパス株式会社のすべての役職を解任されて以来、同社の一取締役として職務に当たって参りましたが、本日、同社の取締役を辞任致しましたので、ここにご報告申し上げます。
これまで半生を捧げてきたオリンパスを辞するとの決断は、私にとって苦渋の選択でありました。しかしながら、平成23年11月29日付の高山社長のメッセージ(「経営体制の刷新」と「将来ビジョンの提示」の検討体制の構築について)を目にするに及び、それが私に残された唯一の選択肢であるとの判断から、このたびの決断に至りました。
11月25日に東京において開催されたオリンパスの取締役会に出席して以来、私は、オリンパスの再生に向けて如何なる形で経営陣の刷新が行われるかという点について、非常に強い懸念を有していました。それでも、信頼に足る再生策が打ち出されることに一縷の望みも抱いていました。しかし、11月29日付の上記高山社長のメッセージに照らすと、高山社長及び現経営陣が、引き続きオリンパスの経営陣刷新についても主導的役割を担い、その結果、かかる現経営陣がオリンパスの新経営陣を指名し、又はその指名に少なくとも何らかの影響力を行使するであろうことが容易に想像されるところです。
高山社長及び現経営陣がいくらオリンパスの改革及び再生を約束しても、かかる約束は、極めて信頼性に乏しいものであり、オリンパス及びその将来にさらなる害を及ぼすものに過ぎません。過去の過ちに関与した現経営陣の面々が、オリンパスの新たな経営陣の選定に関わるなどということは、極めて不適切であると言わざるを得ません。そのような類の、会社にとって重要な判断というものは、株主の手によって下されるべき性質のものですし、現経営陣から完全に独立した新たな経営陣が一刻も早く選任されるべきです。
今後、私は、オリンパスの新たな経営陣を構成する取締役の候補者を提案すべく、本件に関心を有するあらゆるステークホルダーと連携していきます。そして、かかる提案につき株主に判断の機会を提供するために、現経営陣に対し、直ちに臨時株主総会を招集することをここに正式に求めます。このような危機的状況において、会社の舵取りを誰に任せるべきかについては、何よりも株主に判断の機会が与えられるべきだと考えます。
ここで一つ明確に申し上げておきたい点があります。私は、オリンパスを去るために辞任をするわけではありません。オリンパスという会社、その製品、従業員、そしてその将来に対する私の情熱は、全く揺らいでいません。オリンパス自体は素晴らしい会社であり、たまたま一部の経営陣の手によって誤った道に陥ってしまったに過ぎません。最高レベルのコーポレートガバナンスを実践すれば、オリンパスは、再び競業他社がうらやむような世界水準の企業として復活する力を十分に兼ね備えています。それを実現するためにオリンパスに復帰し、そこでリーダーシップを発揮することを、私は切に望んでいます。しかし、株主による判断の機会が持たれることがない中で、私にできることは、オリンパスが再生の道を確実に歩むことができるよう、過去の過ちに関与していない新たな経営陣への早期刷新を促すことであり、そのためには、私自身の辞任が必要不可欠と判断致しました。
私の辞任が、現経営陣の方々にとって、自らの過去の過ちを真摯に反省し、オリンパスの危機的現状を招いた自らの責任を自覚するきっかけとなればと願っています。そして、それらの方々が、臨時株主総会後に身を引くという、オリンパスのために最適の選択をされることを願っています。
今回の私の行動が、私にとってかけがえのない存在であるオリンパスの明るい未来を実現するためにベストな選択肢であると確信しています。オリンパスのためであれば、私はいかなる犠牲も厭わない覚悟です。
マイケル・ウッドフォード
問合せ先: 長嶋・大野・常松法律事務所
弁護士 荒井紀充
弁護士 清水毅
弁護士 塩崎彰久
(電話:03-3511-6274)