EDITOR BLOG

東芝解体と海外ファンドの食指
東芝の解体とその事業売却の行方に関係者が気を揉み始めている。パソコン事業や白物家電事業の切り出しと並んで注目されているのが、グループ内で医療機器事業を手掛ける東芝メディカルシステムズの売却である。収益面で足を引っ張る白物家電事業などを切り離して止血するのとは違い、収益力が強い東芝メディカルの売却は外部からの資金を採り入れるための輸血であり、ライバル企業にとっても投資ファンドにとっても関心は高い。しかし重要な視点を忘れてはいないか。
関係者が気を揉む理由は、東芝メディカルの事業領域と入札参加者の顔触れにある。東芝メディカルはX線診断システムやCTシステム、MRIシステムなどの製品ラインナップで高い収益力を誇り、比較的シェアは小さいが電子カルテも手掛けている。
一方で入札に参加したのは富士フイルムやコニカミノルタといった事業会社のほか、海外プライベートエクイティファンドのコールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)なども含めて10社前後に上った。なかでもKKRは2014年にパナソニックの医療機器部門だったパナソニック・ヘルスケア(PHC)を買収しているだけに「売却先がKKRになった場合、PHCと東芝メディカルを一緒にして売却するのではないか」との懸念が浮上している。
KKRがPHCを買収した際に懸念されたのは、PHCが診療所向け電子カルテで高いシェアを持っていたことだ。電子カルテは遺伝子情報まで含めて個人情報の塊で、その蓄積につながる同事業はビッグデータを取得するうえでも大きな価値がある。蓄積されたデータが抜き取られて外国企業に売却され、二次利用されるとどうなるか。
医薬品メーカーにとって医薬品開発や営業の重要な手掛かりとなるし、保険会社にとってはどの地域にどんな保険商品を販売すればいいのか、判断材料になる。日本市場が海外企業の草刈り場と化す懸念があるため、PHCの売却に際しては日本政府が問題視したほどだ。
一般診療所向けの電子カルテで、PHCのシェアは20%強でトップ。一方、東芝メディカルは病院向けで2%のシェアを持つ。両社がカバーしている医療機関に通う患者を合計すると最低でも数百万人、カウントの仕方によっては4千万人にも上り、ビッグデータとしての価値はいよいよ高まる。医療データを保有するのは医療機器メーカーではなく医療機関だが、メーカーはメンテナンス時にデータを閲覧でき、医者のように厳重な守秘義務が課せられていないという法律上の穴がある。
パナソニック・ヘルスケアの買収金額は1650億円で、当時は政府内に「台湾の保険会社を中心とした企業コンソーシアムへの転売が前提」という情報がもたらされ、日本の医療データという個人情報が中国を含む海外にダダ漏れになるのではないかとの懸念が強まった(KKRジャパンは否定)。中国のフアーウエイ(華為技術)、アリババ、そして直近の紫光集団の米国市場参入と通信系やデータ系へのアクセスに対しては米国政府も神経を尖らせており、KKRのファンドの金主に中国マネーが流れこんでいないか調査した経緯もある。
今回の東芝メディカルの入札では、当初4000億~5000億円と言われたのが、6000億円強にまで釣り上がったとの情報もある。それだけの価値が何によって見込めるのか。今さら海外投資ファンドの入札参加にケチをつけるつもりはないが、ゲノム情報保護でも日本は法律の整備が遅れているだけに、事後の監視も含めてガードを厳重にしないと、シャープの液晶事業よりも大きな国益を損ないかねない。
買われた? 東京五輪4――ヒカリコは火中の栗拾わず
前回掲載した組織委スポークスパーソンに対する質問状に対し、なぜか組織委理事、高橋治之コモンズ会長の秘書から2月5日に返答が来た。組織委から高橋氏に質問状が回されたようで、高橋理事からの回答である。
*****
(高橋より)
以下お答えしますが、私は電通を2009年に退職していますので、基本的に詳しい事は知りません。
1. 私は何も関与していません。No, I didn’t have any concerns about it.
2. 関係していません。No, I am not concerned.
3. 関係していません。No, I didn’t have any concerns about it.
4. 全く知りません。No, I don’t have any knowledge about it.
5. 独占マーケティング権を電通が持っているのですから、日本企業にかたよるの
は当然だと思います。
6. 私は2009年に電通を退職していますので、そのような事実は有りません。
7. 事実ではありませんし、ちなみにアフリカ票は11票です。
8. 私は全く知りません。
尚、The GuardianのGibson記者より弊社へ同じ質問状をお送り頂いたとのことが書かれておりましたが、本日時点でメール、FAX、郵便等一切届いておりません。
以上、ご確認くださいませ。
よろしくお願い致します。
*****
さて、組織委のほうは回答しないのかと思ったが、2月8日に小野日子名の返答がきた。予想通りここに掲載するにも値しない空疎なものだった。
「ご質問は、いずれも招致段階に関するものであり、開催都市決定後に設立された東京2020組織委員会としては、これらのご質問に対してお答えできる立場にありません。東京は、IOCに東京都による提案内容を評価していただき招致を獲得したものと理解しております。
スポークスパーソン小野日子」
あらヤダ、招致委にはいませんでしたから、知ったこっちゃないんですのよ、という立派なお心がけだ。さすが世界を翔けるママさん外交官である。火中の栗は拾わない。霞が関の鑑ですな。しかも、このメールには、組織委戦略広報課から「本メールは、意図された受取人以外の方による情報の開示、複製、転送などの利用が禁止されています。誤送信等により標記の受信者様以外の方が本メールを受信された場合、誠にお手数ではございますが送信者にその旨ご連絡いただきますようお願い申し上げます」と注記がついている。この程度のことしか答えられなくて、開示、複製、転送禁止だと?ははん、笑わせるな。スポークスパーソンの発言はクオートされるためにあるんでしょうが。彼女には何の権威も責任もないと言っているようなものだ。組織委の「拠らしむべし、知らしむべからず」の典型としてここにさらしましょう。
買われた? 東京五輪3――組織委員会への質問状
2020年東京五輪には、すでに三つのスキャンダルが起きている。第一がザハ・ハディド設計の新国立競技場案の白紙撤回で、これは本誌14年9月号「新国立競技場に『森・石原密約』」、同10月号の「国立競技場解体に『天の声』」、同11月号「『戦犯』は日建・竹中・電通」の3連打スクープで火がつき、翌年のやり直しコンペにつながった。
第二がエンブレムのパクリ問題、そして第三が当初の運営費見積もり3千億円が、すでに1兆8千億円と6倍に膨れ上がり、舛添都知事自ら3兆円になる可能性を白状した野放図な運営費膨張である。本誌は今年2月号の「許せるか『放漫五輪』運営費3兆円」で報じた。
そこに振って湧いた今回の国際陸連前会長を通じたアフリカ票の買収疑惑である。東京五輪組織委にも英ガーディアン紙との共同質問状を送った。宛先は外務省出身のスポークス・パーソン、小野日子さんである。日子と書いて「ヒカリコ」と呼ぶ。元内閣副広報官・官邸国際広報室長と立派なキャリア外交官だが、ガーディアン紙の当初の記事には「「まったく知らない事」「東京が開催地に選ばれたのは開催計画が優れていたから」という白々しいコメント。「1年で地球を6・2周、海外を飛び回る外交官ママ」なんて日経におためごかしを書かれている女性に、改めて問い直すことにした。
*****
東京オリンピック・パラリンピック組織委員会広報
小野日子様
パウンド報告についての共同質問状
月刊FACTA発行人阿部重夫
The Guardian Owen Gibson
拝啓
時下ますますご清祥のことと存じ上げます。ご承知かと思いますが、1月14日にWADA独立委員会のドーピング報告書第二弾(Dick Pound報告)が発表され、セネガル人のIAAF(国際陸連)前局長Lamin Diack氏及びその二人の息子と法律顧問への疑惑の詳細が明らかになりました。
英国紙The Guardinanやそれを受けたブラジル紙などが、2020年五輪招致でイスタンブールが東京に敗れたのは、トルコが息子の一人Khalil Diack氏が要求する400万~500万ドルのIAAF供託金を払わず、東京が支払ったからだと報じています。Khalilとトルコ関係者の間でそうした会話があったとし、Pound委員長は報告はドーピング究明が主眼でそれ以上追及しなかったが、国際刑事機構(インターポール)、仏検察庁が内偵中で、国際オリンピック委員会(IOC)も問題視していると報じられています。
FACTAはThe GuardianのOwen Gibson記者と協力し、「カネで買われた東京五輪」の真相究明を進めています。すでに小野さんは「理解を絶している」とコメントしていますが、ディック・パウンド氏は元IOC副会長・元マーケティング委員長で、電通の表も裏も良く知る人物です。われわれも内部関係者からの取材により、2029年までの国際陸連主催大会の全放送権とマーケティング権を取得している電通の関与を強く疑っています。とりわけ電通元専務、高橋治之氏について弊誌が報じた疑惑を十分研究されてから、以下のThe GuardianとFACTAの共同質問状にお答えいただければ幸いです。
1~4問はGibson記者(すでに高橋氏のコモンズにも同じ質問を送っています)、5~8問はFACTAの質問です。
1.Did Mr Takahashi ever have any concerns about the behaviour of Lamine Diack, his son Papa Massata Diack or his legal adviser Habib Cisse during his years dealing with the IAAF for Dentsu?
2. Is he concerned that Dentsu could be dragged into the scandal given its longstanding links to the IAAF?
3. Dentsu agreed that Papa Massata Diack could act as a marketing consultant in developing markets? Did he ever have any concerns about this arrangement?
4. The second part of Dick Pound's Wada report raised the possibility that Lamine Diack may have switched his vote from Istanbul to Tokyo because a Japanese sponsor agreed to back the IAAF. Does he have any knowledge of this deal? What was his view of the allegation?
5. 現在のIAAFのスポンサーはアディダスを除けば、キヤノン、セイコー、TDKと日本企業ばかりで、放送権の最大権料もTBSです。電通とDiack親子(とりわけPapa Diack)が特別な関係にあるからだと批判されていますが、石井直社長や中村潔執行役員ら電通スポーツ局幹部がDiack親子を増長させたと考えますか。
6.FIFAへの資金ルートだった ISL破綻後も、IAAFと電通の関係をつないできたのは元専務高橋氏(五輪組織委理事、コモンズ会長)と言われていますが、事実でしょうか。
7.高橋氏が東京招致にあたり「(アフリカの)40票は自分が取ってきた」と豪語したと伝わっています。電通が高橋氏のコネクションを頼り、親しいディアク氏に説得させてアフリカ票を東京に投じさせたとも言われますが、事実ですか。
8 .スイスでISLなきあと、電通の〝財布〟代わりにAthlete Management Servicesが使われてきたのは事実でしょうか。AMSは必然性もないのに、五輪やFIFAイベントなどで電通から業務委託を受け、カネのチャネルになっていますが、今回の供託金もAMSが使われたのでしょうか。
質問は以上です。お忙しいところ恐縮ですが、締め切りの都合もありますので2月8日(月)までにご回答いただければ幸いです。 敬具
2月2日
*****
この回答は次号で。
買われた? 東京五輪2――電通の回答
前回載せた英ガーディアン紙とFACTAの共同質問状に対して、電通から広報部長名で回答が届いたのは2月8日である。ご丁寧にもガーディアンに対しては英語で、弊誌には日本語でご回答いただいたのだが、どっちも「木で鼻をくくったよう」と言うほかないような素っ気ないものだった。まずガーディアンのオーウェン・ギブソン記者宛て。
*****
Dear Owen san,
Thank you for your email.
My answers to your questions are as follows:
1. Dentsu has always believed in the importance of contributing to the success and growth of any federation with which it does business.
2. Dentsu Inc. has never employed Papa Massata Diack as a consultant. It is understood he was a Marketing Consultant of the IAAF.
3. We have full confidence in the new leadership of the IAAF and the reform process being led by current IAAF president Sebastian Coe.
4. Dentsu Inc. has been appointed as the Tokyo 2020 Organising Committee's marketing agency, but the company was not actively involved in the Tokyo 2020 bid.
5. We do not understand this question.
Best regards,
*****
続いて、弊誌に対するメール返信は以下の通りである。
*****
お世話になっております。
先日、当社の小林宛に頂戴したご質問(6~10番)の件ですが、下記のとおりご回答申し上げます。
6. 電通は様々なスポーツ連盟と適切なビジネスを行っております。
7. 第三者に関するご質問につきましては、当社は回答する立場にございません。
8.第三者に関するご質問につきましては、当社は回答する立場にございません。
9. そのような事実はございません。
10.IAAFとビジネス上の連絡業務は行っております。
なお、Gibson記者からのご質問に関しましては、ご本人にすでに回答させていただいております。
以上、よろしくお願いいたします。
株式会社電通
コーポレート・コミュニケーション局
広報部長
*****
ギブソン記者の第四問に対する返答が、電通は組織委員会のために働いているが、招致活動はactivelyには関わっておりませんと答えている。
2016年東京五輪招致が失敗したあと、06‐09年度に都が外部業者と契約したPR事業費など41億円のうち8割にあたる32億円が電通との随意契約だったことが判明、しかも招致費用150億円(都100億円、民間資金50億円)の予定が6億円の足が出て、電通が債権放棄を求められたと言われた。この問題がくすぶっていたのは事実である。だから、14年4月17日に組織委と五輪マーケティング権の契約を結ぶまで、表向きはアクティヴに招致活動に関われなかったという意味なのだろうか。大きな商権となる2020年五輪を、電通が指をくわえて見ていたなんて、誰が信じるだろうか。
組織委にもガーディアンと共同質問状を送った。それは次回に。
買われた?東京五輪1――電通への質問状
読者の皆さんも覚えているだろう。2013年9月7日、ブエノスアイレスで行われた第125回国際オリンピック委員会総会で当時のジャック・ロゲ会長が笑顔で「TOKYO!」と声を発した瞬間を。2020年オリンピックとパラリンピックの開催地に、イスタンブール(トルコ)、マドリード(スペイン)を押さえて東京が選出されたのだ。会場にいた安倍晋三首相ら日本代表団は歓喜の声を挙げて跳びあがり、日本全土に興奮の渦が広がった。
だが、あの歓喜をもたらしたのが、「オ・モ・テ・ナ・シ」の滝川クリステルの笑顔でも、ド下手な英語でプレゼンした当時の都知事、猪瀬直樹の奮闘でもなく、単なる裏金のおかげだったとしたら……。あれから2年半経って、英国でにわかにそんな疑いが強まっている。しかも昨年噴出したロシア陸上選手のドーピング疑惑で、いまやFIFA(国際サッカー連盟)に続く第二のスポーツ・スキャンダル、IAAF(国際陸上競技連盟)疑惑の渦中で飛び出したのだ。
国際陸連のラミーヌ・ディアク前会長とその息子たちが、ドーピングに目をつぶる見返りに賄賂を要求していたことは、フランスの検察当局などの家宅捜索、逮捕などで明かになり、世界反ドーピング機関(WADA)の調査委員会が二度にわたり詳細な調査報告書を発表している。その第二報告書の34ページ、10・7・1「トルコの陸上選手、アルプテキンに関する主要事実」の脚注36に以下のショッキングな記述がある。
Transcripts of the various discussions between Turkish individuals with KD [Khalil Diack] make reference to a discussion regarding the Olympic city bidding process for the 2020 Summer Olympic Games. It is stated that Turkey lost LD’s [Lamine Diack’s] support because they did not pay sponsorship moneys of $4m-$5m either to the Diamond League or IAAF. According to the transcript the Japanese did pay such a sum. The 2020 Games were awarded to Tokyo. The IC did not investigate this matter further for it was not within our remit.
IAAF疑惑がこれでIOC疑惑に飛び火した。FACTAはこのくだりに注目して東京五輪「買収」疑惑の記事を書いた英ガーディアン紙のオーウェン・ギブソン記者に連絡を取った。そしてIAAFと電通がただならぬ関係にあり、その関係がFIFAとアディダスと電通が放映権やマーケティング権などのスポーツ利権で組んだ1980年代に発するものであること、またこの関係の土台を築いた電通元専務、高橋治之コモンズ会長(東京五輪組織委理事)の関与を証言する内部情報があることを知らせた。
もし、東京五輪が“買われた”ことが事実だったら、これは日本の恥ではないか。新国立競技場といい、エンブレムのパクリといい、ケチがつくばかりの東京五輪の不運も、最初からダーティーな影につきまとわれていたのか、何としても確かめなければならない。そして闇で誰が蠢いたのかも。
こうしてFACTAとガーディアンの共同取材が実現、FACTA3月号のギブソン記者寄稿のスクープ「東京五輪招致で電通『買収』疑惑」を掲載することになった。掲載に先立ち、ギブソン記者と弊誌は電通と東京五輪組織委に質問状を送っている。まず電通宛てから紹介しよう。
*****
電通コーポレート・コミュニケーション局宛て質問状
いつもお世話になっております。
ご承知かと思いますが、1月14日にWADA独立委員会のドーピング報告書第二弾(Dick Pound報告)が発表され、セネガル人のIAAF(国際陸連)前局長Lamin Diack及びその二人の息子と法律顧問への疑惑の詳細が明らかになりました。
英国紙The Guardinanやそれを受けたブラジル紙などが、2020年五輪招致でイスタンブールが東京に敗れたのは、トルコが息子の一人Khalil Diackが要求する400万~500万ドルのIAAF供託金を払わず、東京が支払ったからだと報じています。Khalilとトルコ関係者の間でそうした会話があったとし、Pound委員長は報告はドーピング究明が主眼でそれ以上追及しなかったが、国際刑事機構(インターポール)、仏検察庁が内偵中で、国際オリンピック委員会(IOC)も問題視していると報じられています。
FACTAはThe GuardianのOwen Gibson記者と協力し、「カネで買われた東京五輪」の真相究明を進めています。東京五輪スポークスパースンの小野日子氏は「理解を絶している」とコメントしましたが、内部関係者からの取材により、2029年までの国際陸連主催大会の全放送権とマーケティング権を取得している電通の関与が疑われています。そこでThe GuardianとFACTAの共同質問状を作成しました。
1~5問までがGibson記者の質問、6~10はFACTAの質問です。
1. Given the revelations of widespread corruption at the top of the IAAF, did Dentsu ever have any concerns during the course of its long relationship with the federation?
2. Dentsu gave permission for Papa Massata Diack to act as a marketing consultant to the IAAF in emerging markets. Did it ever have any concerns about this arrangement?
3. Does Dentsu plan to review its contract with the IAAF in light of the most recent Wada report from Dick Pound?
4. What was Dentsu's involvement in Tokyo's bid for the 2020 Olympics? What is its relationship with the organising committee now?
5. The Pound report suggested that Lamine Diack switched his vote from Istanbul to Tokyo after a Japanese company agreed to sponsor the IAAF. What was Dentsu's involvement in this deal?
6. 現在のIAAFのスポンサーはアディダスを除けば、キヤノン、セイコー、TDKと日本企業ばかりで、放送権の最大権料もTBSです。電通とDiack親子(とりわけPapa Diack)が特別な関係にあるからだと批判されていますが、石井直社長や中村潔執行役員ら電通スポーツ局幹部がDiack親子を増長させたと考えますか。
7.FIFAへの資金ルートだった ISL破綻後も、IAAFと電通の関係をつないできたのは元専務の高橋治之氏(五輪組織委理事、コモンズ会長)と言われていますが、事実でしょうか。
8.高橋氏が東京招致にあたり「(アフリカの)40票は自分が取ってきた」と豪語したと伝わっています。電通が高橋氏のコネクションを頼り、親しいディアク氏に説得させてアフリカ票を東京に投じさせたとも言われますが、事実ですか。
9.スイスでISLなきあと、電通の〝財布〟代わりにAthlete Management Servicesが使われてきたのは事実でしょうか。AMSは必然性もないのに、五輪やFIFAイベントなどで電通から業務委託を受け、カネのチャネルになっていますが、今回の供託金もAMSが使われたのでしょうか。
10.弊誌既報の通り、石井直社長は北京世界陸上終盤の8月29日、ディアク前会長とガラの会場で会っていますが、電通は疑惑発覚後にディアク側と連絡を取りましたか
質問は以上です。お忙しいところ恐縮ですが、締め切りの都合もありますので2月8日(月)までにご回答いただければ幸いです。
2月2日
*****
回答は次回にしよう。
「LIXIL藤森」の墜落10――ヘインズの「背任」を庇う異常
LIXILグループの“闇”を追い続ける本誌は、2月20日発売の最新号(3月号)にも続報を掲載した。詳しくは記事(LIXILにファンド連合の罠)をお読みいただきたいが、調べれば調べるほど新たな疑惑が湧き出します。例によって本誌が送った質問状とLIXILの回答を下に公開しますので、読者の皆さんにも謎解きを楽しんでいただきたい。
今回の質問は5つ。LIXILは2番目の質問を除いてまともな回答を寄こさなかったが、意外だったのは、4番目と5番目の質問に対して「1月18日に公表した適時開示資料以上の内容につきましては差し控えさせていただきます」と回答したことです。つまり否定も肯定もしなかった。
4番目の質問は、最新号の記事でも取り上げたグローエ会長兼CEO(最高経営責任者)のデビッド・ヘインズの「背任疑惑」について、LIXILの見解を問うたものです。ウソでも否定するだろうと予想していたら、実際の回答は事実上のノーコメント。ということは、疑惑を否定できないのにヘインズを庇っていると見られても仕方がない。
ヘインズはグローエのトップと同時に、LIXILグループの水回り事業をグローバルに統括する「ウォーター・テクノロジー」カンパニーのCEOと、事業会社である(株)LIXILの取締役を兼務しています。ドイツの会社法に触れる背任の疑いが濃厚にもかかわらず、ヘインズを更迭も処分もせず、事実を隠し続けているのはどう考えても異常です。
5番目の質問は、不正会計が露見して破綻したジョウユウに対してLIXILが事実上の債務保証をしていたことに関し、ジョウユウ買収後のデューディリジェンス(資産調査)が開始される前に債務保証を決定した理由を問うもの。これを否定できないのは、経営陣の重過失を認めたも同然と言えます。
そもそも、財務の実態がわからない中国の民営企業に対し、まともな調査もしないで最大3億ドル(約340億円)もの債務保証をつけたこと自体、正気の沙汰ではない。こんな異常な意思決定を、果たして経営トップの藤森義明社長兼CEOの意向だけでできたのか。創業家出身の潮田洋一郎・取締役会議長を含め、経営陣全員の責任が問われるべきです。
LIXILの一般株主は、これらの疑惑について6月の株主総会で徹底追及すべきなのは言うまでもありません。LIXILが連結子会社トップの背任疑惑を庇い、矛盾だらけの情報開示を続けているのは明白ですから、東証や金融庁証券取引等監視委員会も放置せず調査に乗り出すべきでしょう。
*****
GROHEの財務状況等に関する取材のお願い
ファクタ出版株式会社
月刊FACTA発行人阿部重夫
平素は弊誌の取材活動にご協力いただき、ありがとうございます。
私どもはJoyouの不正会計問題の取材を継続していますが、その過程で、Joyouだけではなく直接の親会社だったGROHEにも重大な問題があった可能性が高いとの心証を得ています。つきましては下記の5点についてご回答いただきたく、お願い申し上げます。
<質問>1.御社はGROHEの連結子会社化を発表した2014年12月10日付IR(投資家向け広報)のなかで、GROHEの連結貸借対照表(B/S)および連結損益計算書(P/L)の要約版(連結純資産、連結のれん、連結総資産、連結有利子負債、1株当たり連結純資産、連結売上高、調整後連結EBITDA、連結営業利益、連結当期純損益、1株当たり連結当期純損益、1株当たり配当金の11項目)を開示しています。
その後、Joyouの破綻にともないGROHEのB/SとP/Lはどのように修正されたのでしょうか。上述IRで開示した各項目に「のれん以外の無形固定資産」を加えた12項目について、比較可能なように2014年12月期の「修正前」と「修正後」の数字を教えてください。
<回答> LIXILは2014年1月に共同出資者と共同で設立したジョイントベンチャー(GraceA)の子会社を通じてGROHEの株式を取得し持分法適用関連会社の子会社としました。2014年3月期においては、当社の連結財務諸表には投資有価証券としてGraceA株式価値1,028億78百万円計上しておりましたが、2014年1月のGROHE株式取得当初からJoyouが実質債務超過であり無価値であったことから、GraceA株式価値に含まれるJoyouの株式価値相当238億4百万円について、投資有価証券を減額し、同額特別損失に計上いたしました。2015年3月期の第3四半期までの各四半期においては、GraceAを通じて持分法投資損益として取込されていたことから、第1四半期から第3四半期までに計上したJoyouの利益に対する持分法投資損益及び投資有価証券それぞれ68百万円、342百万円、299百万円減額しております。
<質問>2.GROHEの連結B/Sに計上されたのれんおよびのれん以外の無形固定資産は、LIXILの連結B/Sのどの項目に算入されたのでしょうか。2015年11月18日付四半期報告書の24ページには、GROHEの連結子会社化にともなって発生したのれんが1572億5400万円、のれん以外の無形固定資産が2092億8500万円と記載されていますが、そのなかにすべて含まれているのですか。
<回答> GROHEの連結BSに計上されたのれん及びのれん以外の無形固定資産は、LIXILグループの連結BSの無形固定資産の「のれん」「その他」にそれぞれ計上しており、2015年11月18日付四半期報告書24ページの金額にすべて含まれております。
<質問>3.2016年1月18日付で開示した『Joyou問題に関する再発防止策の進捗状況について』の事実経緯説明のなかで、御社はGROHE経営陣が「2009年のJoyouに対する初期投資段階から、当時の財務デュー・デリジェンス(DD)等において、Joyouの内部統制、コーポレート・ガバナンスや財務情報の報告、現金・財務管理体制が十分ではないことを示す情報を受領していた」ことを認めました。当時から2013年にLIXILに買収されるまでの期間、GROHEはTPGとCredit Suisse(CS)の共同支配下にありましたが、デイビッド・ヘインズ会長兼CEOはこうしたJoyou の諸問題についてTPGとCSに報告していましたか?
<回答> 1月18日に公表した適時開示資料以上の内容につきましては差し控えさせていただきます。
<質問>4.GROHE経営陣(ヘインズ氏)はJoyouの諸問題を2009年から認識していたにもかかわらず、TOB(公開買い付け)などで2011年末までにJoyou株の過半数を取得し連結子会社化しました。また、同年からJoyou監査役会メンバーに就任したヘインズ氏は、蔡親子の抵抗で「主要な財務情報に十分なアクセスができない状態」が続き、なおかつ「貸借対照表上多額の現預金残高を計上していたにも関わらず、支払遅延や融資枠契約に基づく追加の借入実行の承認を監査役会に求めるなどの矛盾する行動」が見られたにもかかわらず、2014年12月期までのJoyouの決算書を承認していました。
つまり、GROHE経営陣は上場子会社の粉飾決算の可能性を十分予見できたのに見て見ぬふりをしていたことになり、会社としてのGROHEおよびJoyouの一般株主に対する明らかな背任行為です。ヘインズ氏らはドイツにおいて刑事、民事の両面から法的責任を問われる可能性があるはずですが、LIXILとしてはどのように認識しておられますか?
<回答> 1月18日に公表した適時開示資料以上の内容につきましては差し控えさせていただきます。
<質問>5.同じく2016年1月18日付開示のなかで、御社はJoyouに対するクロージング後DDを実施するため2014年3月にErnst&Youngを起用したものの、開始が同年11月頃まで遅れたことを明らかにしています。一方、同年7月には御社の斡旋によりJoyou香港法人と邦銀3行の間で総額3億ドルの融資枠契約が締結されました。
つまり、御社はクロージング後DDがまだ始まっていない段階で、メガバンク3行に対してJoyouへの融資を要請し、実質的な債務保証をしたことになります。なぜDDの結果を待たずに見切り発車したのか、理由をお聞かせください。また、メガバンクへの融資斡旋および実質的債務保証はどのような社内プロセスを経て意思決定されたのか、ご説明ください。
<回答> 1月18日に公表した適時開示資料以上の内容につきましては差し控えさせていただきます。
レセプト債問題で浮かぶアーツ証券の謎
レセプト債を販売していたアーツ証券(東京・中央区)に対し、証券取引等監視委員会は1月29日、金融庁に行政処分を勧告した。診療報酬債権(レセプト)を裏付けとした総額227億円のレセプト債が債務不履行となっているこの問題では、租税回避地が絡んだ謎が次々と浮かび上がっている。
破綻した運用会社オプティファクター(東京)は国内外の非上場企業が発行した債券を多く購入しているが、社債を発行していた(つまりオプティからカネが流れていた)都内の会計事務所は取材を拒否。他の社債発行企業にはすでに解散するなどして実体がなくなっている事業体がいくつも見つかるなど、資金の流れには不可解な点や怪しい点が多い。
しかも英領バージン諸島に置かれたオプティ傘下のファンドはその所在地が、刑事事件に発展したセラーテムテクノロジーの大株主と同一の私書箱。しかもこの大株主の事務上の連絡先はアーツ証券となっているのだ。
専門家は「私書箱が同じということは現地管理会社やノミニー(名義代理人)が同じであることを意味し、同じルートで登記や設置を行った可能性が高い」と指摘しており、レセプト債の発行会社とセラーテムは共通の闇を抱えている可能性がある。
アーツ証券の言い訳にも疑問符が付いている。これまでアーツ証券は本誌の取材などに対して「(レセプト債を発行していた運用会社やファンドが)債務超過だとは知らなかった」と言い繕ってきた。しかしこれまでに入手した様々な資料を検分すると、そうした説明は疑わざるを得ない。
資料のひとつを紹介しよう。2015年8月にアーツ証券が個人投資家向けに作成した「勉強会用資料」。レセプト債は投資家が49人以下の私募債であるため目論見書が作成されておらず、販売には簡便な勉強会用資料で代用していた。そこには、レセプト債を発行しながら破綻した運用会社(海外ファンド)のバランスシートが掲載されており、これを見ると遅くとも同年3月末時点で債務超過であったことがはっきりと記されている。
加えて昨年11月8日にアーツ証券が開いた「お客様説明会」の様子を文字起こしした資料もある。債権者集会のような殺気立った雰囲気に包まれたこの説明会では、アーツ証券が以前から債務超過を認識していたことを窺わせる発言もあり、「知らなかった」というのは、やはり苦し紛れのウソだったのだろう。
レセプト債のデフォルトを受けて、アーツ証券は日本投資者保護基金の活用による投資家救済の可能性を探ったそうだ。しかし同基金では「(基金の補償対象になるのは)分別管理業務が課されている金銭や有価証券のうち、証券会社が破綻したした際に投資家に返還できない場合の損失だけ」として、けんもほろろだったとのことだ。
被害に遭った投資家はさぞ気を揉んでいることだろうが、この事件は調べれば調べるほど謎が深まるばかりだ。